菅民主党路線と尖閣問題で

 <菅政権支持率がV字回復>

 菅民主党改造内閣が、各種世論調査によると60%以上という高いV字回復を示している。
 民主党代表選での勝利に於ける〝脱小沢〟の効果だともマスコミで言われているようである。
 しかし、中には〝3カ月で首相を交代させることへの抵抗感〟という消極的な支持だとの厳しい指摘もあるようである。

 〝脱小沢〟と一言で表されている菅民主党政権の中身を考えてみると、それには大きく2つあって

① 小沢氏の〝支配力〟や〝政治とカネ〟などの個人的なもの
② 〝親米主義の強化〟や〝霞が関との融和〟に関するもの

とがあると考えるのである。

 このうち①については「民主党代表戦」での主要なテーマであったのだが、②については改造内閣に於ける岡田外相の幹事長起用や長妻厚労相の交代劇に現れていると見ているのである。
 外相の後任は親米派で知られる前原氏であり、新厚労相は就任式で官僚から大拍手をもらった細川氏なのであり、この方向性は明確である。
 特に問題にしたいのは②の方であって、代表戦では全く論議もされて来なかった話で、恐らく岡田氏も長妻氏もこの移動劇は寝耳に水だったのではないだろうか。



 <中国の軍拡海洋進出と尖閣問題>

 このような〝小題〟を掲げると、今回の尖閣問題でマスコミに踊らされて中国批判を書こうとしていると期待をされてしまうのかも知れない。

 確かに、最近の中国の海軍などの急激な軍拡や太平洋への進出計画に対しては、脅威を持たざるを得ない。
 しかし、今回の〝尖閣諸島での中国漁船の拿捕事件〟に関しては、諸手を挙げての日本政府支持や中国批判をする気にはなれないのである。

 尖閣諸島近海に於ける日中の漁業協定は1997年に締結されたものがある。(漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定)
 ただ、この協定では尖閣諸島の海域に於ける日中の明確な漁業協定は結ばれておらず、日中双方が自由に操業が出来る上に双方が自国の漁船しか取り締まることが出来ないことになっているのである。

 今回の海保による中国漁船の拿捕についても〝海保の巡視船に中国漁船が衝突した公務執行妨害〟での容疑なのであり、今のところ違法操業などの事件ではないのである。

 では何故、今まで問題にならなかったようなことで〝拿捕〟というような事件に発展したのであろうか。
 僕はこれには米国の戦略が関わっていると考えるのである。

 米国は中国海軍の空母建造などの急激な軍拡と、太平洋やインド洋への進出に警戒している。これについては日本も同じである。
 既に南沙諸島に於けるベトナムへのテコ入れや、黄海に於ける韓国との軍事演習と中国とは対立関係が深まっているのである。
 尖閣諸島や沖縄近海に於いても近く自衛隊との軍事演習が予定されているわけである。

 米国としては、南沙諸島に於けるベトナムと、黄海に於ける韓国と同様に、日本を中国への楯として配置するという中国包囲網としての軍事戦略を展開しようとしていると推察されるのである。



 <〝日本の一人負け〟になる米国のしたたかな戦略>

 〝米国が後ろ盾になって尖閣諸島を守る〟という一見良さそうに見えることなのだが、果たして単純にそうなのであろうか。

 鳩山政権では普天間問題で日米がギクシャクしたが、東シナ海での日中のガス田共同開発では一応合意に達していたのである。
 今回の〝中国漁船の拿捕事件〟は日中のどちらから仕掛けたのかは分からないが、日中関係に大きなヒビが入ったことは確かなことである。

 その後の中国政府の日本への対応によって、閣僚級の会談の中止やガス田協定締結の延期、1万人規模の中国観光団の日本訪問の中止など、外交上や経済上での大きなデメリットが発生しているのである。
 更には、今回の事件では〝軍事衝突〟といった最悪の事態までもが懸念されるのである。

 このような2国間での最悪のケースを未然に避ける手段として、政治家同士などによる水面下の2国間の協議の場というものが外交上存在している。
 既に米国と中国の間にはこのような協議の太いパイプが存在しているとされるのである。

 ところが、日本の場合はどうであろうか。
 かつて国会議員による日中友好のための定期的な中国訪問団を組織していた、民主党の小沢氏のグループがあったのである。
 このパイプは田中元首相の〝日中国交回復〟から受け継がれて来たものであり、現在は民主党員である真紀子氏も太いパイプを持っているとされる。

 しかし、反小沢を唱えている菅政権はこうしたパイプを使って、水面下で調整するということをするとは考えにくいのである。
 むしろ、米国の煽動に乗って国民の反中国批判を強めてしまうことが懸念されるのではないだろうか。

 一方、経済問題での日本の現状はどうであろうか。
 日本は単独での為替介入を行わねばならない程に円高が進行している。
 これには、米国の輸出産業振興策としてのドル安戦略が大きく影響していると考えられるのである。
 日本が為替介入をすると、米国はあからさまに反発を強めている現状があるのである。

 このままでは、日本は〝外交でも経済でも悪くすると軍事でも一人負け〟という状況に陥ってしまうのではないだろうか。

 中国に政治的な太いパイプを持たない日本は、やがて中国と敵対し、太い調整パイプを持っている米国に〝巨大な中国市場を独占されてしまう〟ことが懸念されるのである。
 こうなると日本は東アジアでも孤立し、日本経済は国際的に沈没することになる。
 米国の国際戦略はしたたかなのである。



 <日本国民のための日本政府なのである>

 民主党を支持しながらも、今の菅政権には極端な親米路線を展開することで国民的な人気を得た〝小泉政権〟を模倣しているような気がしている。
 言葉が悪いかも知れないが〝ミニ小泉化〟しているという疑いを抱き始めているのである。

 親米を唱えさえすれば、米国の影響力が大きい〝大マスコミ〟の支持を得ることが出来、外務省、防衛省、検察庁などの〝霞が関〟も全て味方に出来るのである。当然、内閣支持率も高くなる。

 しかし、もしもこのようにしようとするのであれば、昨年の政権交代の際に掲げた〝マニフェスト〟はどうなってしまうのであろうか。

 更に別の脅威も迫って来ているのである。
 それは〝外資族議員〟たちの存在である。
 外資族というと聞こえは悪くはないのだが、実は米国の〝ハゲタカ金融〟からの政治献金を受けている議員さんたちのことである。

 ハゲタカ金融は日本への進出と成功(支配)を当然に目指していて、その外資族議員さんたちはハゲタカ金融に有利な政策を推進するのである。
 その最も象徴的なものが小泉政権での〝郵政民営化〟なのであり、ハゲタカ金融は株公開によって郵政資産300兆円を狙っていたのである。
 外資族議員は現在、与野党を問わず衆参議院に150名もいるとされている。

 野党時代に小泉政権を痛烈に批判して来た菅首相であった筈である。
 日本国政府は何よりもまず、〝日本国民の為を第一に〟政策を行って頂きたいと願ってやまない。
 決して米国の傀儡政権のようだった小泉政権の真似などはして欲しくないのである。

 菅首相には民主党の政権奪取の際の原点に立ち返って、日本国民の為の政治を行って欲しいと心からお願いしたい。




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