レーム・ダック化する麻生政権

解散は? 1月?4月?7月?9月? 自民VS民主のデスマッチ

10月31日2時59分配信 産経新聞

 麻生太郎首相が30日の記者会見で、事実上、「11月総選挙」の見送りを表明したことを受け、来年9月の衆院任期満了に向け、首相がいつ解散権を発動するかに焦点は移った。有力な解散時期として来年1、4、7、9月の4つが上がっており、自民、民主両党は今後この4つの時期を見据えながら虚々実々の駆け引きを繰り広げることになる。それぞれの解散時期は与野党にとってどのようなメリット、デメリットがあるのか。首相は30日も「解散はしかるべき時期に私が決める」と胸を張ったが、「最強のカード」をいつどのように切る腹づもりなのか-。(石橋文登)

 「近々に地方遊説を始めるから準備を頼むぞ!」

 首相は30日午前、自民党の林幹雄幹事長代理を首相官邸に呼び、上機嫌でこう告げた。首相は昨年の総裁選で福田康夫前首相に敗れた後、全国161カ所を行脚した。そのおかげで4度目の挑戦で首相の座をつかむことができたとの自負があるだけに、首相としての地方遊説には「攻める立場で解散権を行使したい」との思いがにじむ。

 そこで浮上しているのが来年1月の通常国会冒頭での解散だ。また、今国会に2次補正予算案の一部が提出され、延長されれば「年末解散、1月総選挙」という選択肢も出てくる。

 与党にとって1月解散のメリットは、減税などの大型経済対策と来年度予算案などをセットで国民に示し、「これで日本を元気にしたい」と訴えることができる点だ。勝利すれば「国民の信任を得た」として、さらに大胆な経済政策を打ち出すことも可能になる。この時期ならばすでに1次補正予算が執行され、政党助成金も交付されているなどの「うま味」もある。

 真冬の選挙戦は寒冷地に辛い戦いを強いるため最近は行われていないが、過去には頻繁に行われた。平成2年にも海部俊樹首相(当時)が1月24日に解散し、2月の総選挙となった。

 だが、この時点で景気が回復基調に乗っている可能性は低い。11月4日の米大統領選でオバマ候補が勝利すれば、日本にも「チェンジ旋風」が吹き荒れる可能性がある。衆院再議決が可能となる与党で3分の2以上の現状議席を失うことは確実で首相の与党内での求心力低下も懸念される。

 次は来年度予算案成立直後の4月解散が有力となる。衆参ねじれにより予算執行に必要な関連法案が参院で審議が引き延ばされた状態ならば、与党はこれを攻撃材料にできる。裏を返せば「4月解散」をチラつかせることが、通常国会での予算案審議を円滑に運ぶテコとなるわけだ。

 ここで解散を見送れば、今度は通常国会閉会後の7月解散が現実味を増す。この時点で景気が底を打ち、回復基調に乗っていれば「麻生政権の成果」をアピールできる。7月8~10日の主要国首脳会議(伊マッダレーナ島サミット)で首相が指導力を発揮できればさらに追い風となる。

 だが、同時期には東京都議選が実施される。ダブル選にすれば「首都決戦」の相乗効果も期待できるが、都議選は新銀行東京の経営問題など波乱要因を抱えており、「共倒れ」となる危険性も高い。加えて都議選を最重要視する公明党の激しい抵抗が予想される。

 7月を逃せば、残る選択肢は衆院が任期満了になる9月の解散しかない。自民党総裁任期は来年9月なので総裁選を前倒しして内閣改造した上で解散を打つ手はずだ。

 民主党の小沢一郎代表も満を持して「政権交代」を前面に選挙戦に挑んでくるはずだ。負けた政党はその後の政界再編で散り散りになるとみられ、「最終決戦」の様相を帯びる公算が大きい。

 これに対し、与党は麻生政権の成果をアピールすることで応戦することになるが、「追い込まれ解散」の印象が強くなる。首相が「全治3年」と評した日本経済をどこまで立て直しているかが大きなポイントとなるだろう。

 11月30日に投開票と噂されていた衆院の解散は先送りにされ、民主党は国会での対応を「対決」へと豹変させた。
 途中で政権を放り投げた安部・福田政権と同じ様に、「ねじれ国会」が麻生政権をレーム・ダック化させてしまうのではないだろうか。

 解散の先送りの原因は、自民党が行った世論調査の結果であると言われている。
 1ヶ月前に出た調査と一昨日出た調査があるとされる。
 一昨日のものは1ヶ月前よりも悪くなっているようなのである。

 1ヶ月前のは自公の与党合計で過半数割れの危険性は高かったとされていたが、今回のは過半数割れがほぼ確実な情勢であったというのである。
 今回の調査結果では、300議席の小選挙区で与党が勝てるのは136議席に留まり、比例区を加えた自公の与党合計でも207~226議席に留まるという結果だったのだという。

 これでは麻生首相は解散に踏み切れない。確実に野党へ転落である。
 1ヶ月前であれば、まだ過半数を取れる可能性は今よりは高かった。
 もしかしたら、安部・福田政権の時よりも悪くなってしまっているのではないだろうか。
 時間が経てば経つほどに状況が悪化している。その意味で、麻生首相は解散権の行使のチャンスを逃してしまったのではないだろうか。

 このまま行けば「ねじれ国会」と「経済不況」という十字砲火に晒されることになる。
 麻生政権は、安部・福田政権よりも酷いレーム・ダック政権になってしまうのではないか。
 衆院の任期は来年の9月までである。早くしても遅くしても、もはや「追い込まれ解散」しかないのではないだろうか。

 この未曾有とも言うべき深刻な世界的経済不況の中で、国民の審判を受けていないレーム・ダック政権が舵取りをするというのは問題だと思うのである。
 このまま行けば、結局「ねじれ国会」で何も出来ない。事実、麻生首相は今回の「追加経済対策」をいつ国会に提出するかの明言を避けている。紛糾が必至だからだ。

 国会で今するべきことは、自民党や民主党の各政党が今後の緊急や中・長期の経済政策をマニュフェストとして国民に示し、衆院の解散・総選挙で国民の審判・支持を仰ぐことであろう。
 早期解散を前提に、与野党で緊急の経済政策を至急的速やかに取りまとめて国会を通し、暫定的な緊急経済対策を即時に実行させる。

 その上で、衆院の解散総選挙を行って国民の審判を受けた政権を樹立し、国民の支持を受けた経済政策を実行する。選挙機関中でも内閣は存在しているのだから緊急の対応は可能である。
 次の政権がどのような形のものになるかは選挙を通して国民が決めるものであって、ねじれが残るか、多数与党が出来るか、政界再編が必要になるかはその国民の判断に従うべきである。
 決して、選挙という国民の審判を受けていない現政権で、国民不在での大連立のような展開にはすべきではないと考えるのである。
 現在の経済不況は短期的なものではなく、少なくとも1年以上は続くと言われている。だからこそ、政党間でのマニュフェストで選挙という過程を経た、国民の支持を受けた政権が舵取りをしなければならない筈であろう。