麻生首相「追加経済対策」を発表、しかし

<追加経済対策>事業規模26.9兆円

10月30日22時19分配信 毎日新聞

 政府・与党は30日夕、金融危機や景気後退に対応した追加経済対策を発表した。全世帯に総額2兆円を給付する「生活支援定額給付金(仮称)」の年度内実施を明記。高速道路料金の大幅値下げ、過去最大規模の住宅ローン減税も盛り込んだ。政策減税分を除く財政支出規模は5兆円。貸し渋り対策で中小企業向けの信用保証枠を大幅拡大したため事業規模は26.9兆円に膨らみ、小渕政権(当時)の経済対策(98年11月、事業規模24.9兆円)を上回る規模となった。

 追加対策の目玉の「定額給付金」は年度内に実施する予定で、財源には特別会計の積立金など「埋蔵金」を充てる方針。高速道路料金引き下げでは、東京・大阪圏を除く地方の高速道路の利用について原則、休日は1回1000円で「乗り放題」にする大胆な策を盛り込んだ。

 地方支援の臨時交付金創設(6000億円)など総選挙も意識し、地方に手厚く配分したのも特徴。企業向けでは中小企業の法人税率(現行22%)を時限的に引き下げるほか、株価テコ入れのため証券優遇税制を3年延長するとともに、「銀行等保有株式取得機構」による株式買い取りを年内にも再開させる方針だ。

 対策の財源は特別会計の「埋蔵金」を取り崩すほか建設国債を発行。赤字国債の発行は回避する。ただ、住宅ローン減税などの減収分は5兆円の財政支出には含まれていない。減税実施に伴い、兆円単位の歳入減が生じると見られ、09年度以降の財政を圧迫するのは確実だ。【尾村洋介、清水憲司】 

 今回発表された麻生内閣の「追加経済対策」の要点を整理すると以下のようになるだろうか。

 ①生活支援定額給付金(家族4人で6万4000円)

 ②住宅ローン減税(過去最大の600万円)

 ③高速道路割引(休日1000円で走り放題)

 ④地方支援の臨時交付金(道路特定財源を一般財源化し地方に1兆円配分)

 ⑤中小企業の法人税率の引き下げ(現行22%を時限的に引き下げ)

 ⑥証券優遇税制(株価テコ入れのため3年延長)

 ⑦「銀行等保有株式取得機構」(株式買い取りを年内に再開)

 ⑧対策の財源は特別会計の「埋蔵金」(赤字国債は発行しない)

 ⑨3年後の消費税引き上げ(2段階で消費税率10%に)


 ①については年度内に支給されるとされ、クーポン券など支給方法についての詳細は不明だが、過去の小渕内閣のときの地域振興券などが参考になると思われる。
 だが、この時の経済効果は殆ど無かったとされ、今回も殆ど期待出来ないのではないだろうか。
 仮に地域振興券のようなクーポン券が配られても、生活必需品などの買いだめに使われる可能性が高く、その翌月は当然その分の消費が落ちて結局「貯蓄」に回ると考えられるからである。
 1世帯に数万円という給付金では経済効果が上がるような消費は期待出来ないと思われる。
 経済効果を上げるには、1世帯に数十万円から百万円の給付金が必要なのではないだろうか。

 また、これの財源が気に入らない。「埋蔵金」でという話ではないか。
 「埋蔵金」は余った国家予算であり、元々国民のものであって、それを恩着せがましく給付するというのはおかしいだろう。 
 どうしても、選挙目当ての「バラマキ」であると見えてしまうのである。

 ②については減税なのであるから、税金(約6年間で)を数百万円から600万円も払っている人々への優遇であると言ってよい。
 即ち、これの恩恵に与るのは年収が千万円以上というリッチな人々のみなのである。
 大多数の殆どの普通の人々は、これまでの120万円の減税でも余裕を持って十分なのであって、言葉だけが過去最大なのである。
 従って、これも経済対策として効果は期待が出来ない。

 ③はこれまでの与党の主張から、大きく民主党の案である「高速道路の無料化」というものに近づいた内容であると思うのである。
 しかし、休日だけ1000円でしかも乗用車だけが対象になっているなど、中途半端なのではないだろうか。
 むしろ、ETCや料金所を取っ払って完全無料化にした方が、ETCや料金所の管理費が無くなるし効果が大きいと思われるのである。
 休日だけ1000円では、休日がお盆の大渋滞のようになってしまうのではと懸念されるのである。 
 また、経済効果を考えるのなら、乗用車ではなくてトラックなどの運送業に携わる車両を大幅に割り引くべきではないだろうか。
 僕は民主党の主張する全車両の高速道路完全無料化の方が、経済効果が遥かに大きくなると考えるのである。

 ④は地方自治体からは歓迎されているようである。
 しかしだ、あの「ガソリン税」という、これの財源が問題なのである。
 これも民主党が主張しているように、「ガソリン税」というものを廃止してガソリンを安くする方が経済効果があるのだろうと思う。
 トラックなどの運送業者は高いガソリン代と高い高速料金に喘いでいるのであって、これを解消することこそが経済効果に直結する筈である。

 ⑤については笑ってしまう。
 売り上げが上がらず利益も出ない、従って税金も払えていない中小企業への法人税率の引き下げなど、経済政策として全く無意味である。
 日本に於ける労働人口の大部分を占めている中小企業は、法人税が高過ぎるのでは無く、この不況下での日々の運転資金が不足していることや、これの貸し渋りや貸し剥がしに苦しんでいるのである。
 緊急な経済政策ならば、このことに対して重点的に速やかになされるべきではないだろうか。

 ⑨については麻生首相の説明で、大胆な行政改革を行ってからと条件を付けている。
 しかしながら、僕としては麻生内閣に「大胆な霞ヶ関改革」は行えないと考えているのである。
 それは、麻生内閣が霞ヶ関の官僚機構と最も近しい内閣だと思えるからである。
 麻生首相にとって身内のような霞ヶ関に大ナタを振るえるとはとても考えられない。
 この経済政策案自体も霞ヶ関の官僚の作文のような気がしてならないのである。
 やはり、「天下り禁止」や「天下り法人の廃止」を主張している民主党の方が、霞ヶ関に対して大ナタを振るえるのではないだろうか。
 「大胆な霞ヶ関改革」をするのが先であって、これをいい加減に誤魔化しての「消費税増税」は国民が許さないだろう。

 今回の麻生首相が発表した「追加経済対策」は、考えれば考えるほど不十分であると思えて来る。
 緊急経済対策が優先で解散総選挙は後と言う割には、期待外れの経済対策なのではないだろうか。
 バラマキはしないとは言っているが、どう見てもバラマキなのではないだろうか。しかも、元々国民のお金である「埋蔵金」という公金を使ってのである。

 この米国発の経済不況は、実際の不良債権が様々な金融商品に変えられて散らばっている為に、まだ底が見えていないと言われている。
 その為、この世界規模の経済不況は、少なくとも1年以上にも長引くとも言われているのである。
 であるから、それへの経済対策はもっと本腰を入れて、長期的に取り組まなければならない問題なのであろうと思うのである。
 そうであるならば、先に総選挙を行って、国民の支持を得た或いは国民の意に沿ったしっかりした政権でもって、この百年に一度という未曾有の経済不況には当たるべきではないだろうか。