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  題「硫黄島とアダム」 <エッセイ>
  画「Iwo-Jima」

 硫黄島、この島は小笠原諸島にあり、東京とグァムのほぼ中間点に位置します。
 摺鉢山という特徴的な山以外は平坦な火山島で、太平洋戦争での激戦地です。
 10月から公開のクリント・イーストウッド監督の映画「父親たちの星条旗」と、同じく12月から公開の「硫黄島からの手紙」は、この島を舞台に、日米双方の視点から描いた2部作だといいます。
 この小さな島で、旧日本兵2万1千名が戦死し、米兵も2万8千名が戦死傷しています。
 有名な米国アーリントン墓地の、星条旗を掲げる人物群の石像は、摺鉢山に掲げられた星条旗を描いたものであり、まさに太平洋戦争を象徴する島になっています。

 この絵ですが、摺鉢山を真っ赤な夕日を背景に描いてみました。出来はともかくとして、一種の鎮魂の気持ちを表したかったのだと思います。

 さて、ここからちょっと、話が変わります。
 人類は過去、このような戦争、闘争、殺戮を繰り返して来ています。
 ところが、人類は皆兄弟という言葉が真実に思えるような話題があるのです。

 人類の遺伝子を研究した結果、7万5千年前から7万年前頃に、人類は一度絶滅しかけたことがあるらしいのです。
 そして、7万4千年前のインドネシアのトバ湖で、とてつもなく巨大な噴火がありました。この間のスマトラ島の大噴火の数千倍の規模だそうです。
 おそらく、これによる大異常気象が原因で、人類は数千人という絶滅寸前にまでなったのでしょう。
 つまり、現在の人類は、わずかなこれらの生き残りの人類の子孫だということです。

 人類には大きく3つの人種があります。
 でも、遺伝学的には、もっとたくさんの多様な人種がいないとおかしいのだそうです。
 人工交配されている犬はあまり良い例ではないかも知れませんが、犬のように多様な人種があった方が自然なのだそうです。
 この理由も、一度絶滅に瀕したと考えるとつじつまが合うのだそうですよ。

 もうひとつ、最近、ただ一人のアダムを、遺伝学的に突き止める研究がなされました。つまり、全ての人類の祖先である、ただ一人の男性を特定するのです。
 Y染色体を最新のDNA検査装置を使って、世界中のサンプルから系図を辿って行くのだそうです。
 ちょっと前に、ミトコンドリア・イブを突き止める研究というのがありましたが、これの男性版です。
 その結論は、全ての人類は、6万年程前にアフリカに居た、ただ一人の男性を共通の祖先に持っているというものでした。つまり、その人がアダムなのです。
 このことは、ミトコンドリア・イブが、アフリカに居たただ一人の女性であると結論したのと矛盾しません。
 また、7万4千年前のわずかな生き残りの人類が、6万年前のアダムの時代になって繁栄を始めたと考えると、理屈も合うのです。そして、そのアダムの系譜だけが、現在まで生き残ったのです。

 まさに、人類皆兄弟ではありませんか。
 最新のDNA研究ってすごいですね。
 人類の真のルーツを探るこの研究は、私たちが自分自身を見つめる視点を大きく変えてしまうものです。
 そう、あの硫黄島も、この視点から見るとどうでしょうか。
 しかし、ここで結論は急ぎません。もっと深い考察が必要だとも思いますから。

 http://www.akira-hino.jp/new_page_143.htm