
数十年続いた「アファーマティブ・アクション」政策が“違憲”であるという判決が米国最高裁で出された。
「アファーマティブ・アクション」とは1961年にケネディ大統領が始めた“人種差別是正”の為の政策である。
進学や就職や職場における昇進において、特別な採用枠の設置や試験点数の割り増しなどの優遇措置をする。
今回の判決では、ハーバード大学などが入学選考で人種を考慮している事が憲法違反であるかが争われた。
この場合、有色人種については成績が十分でなくても“特別な採用枠”でハーバード大学などに入学出来た。
逆に成績が十分であっても入学定員から入学出来ない白人が出て来て、新たな差別になっていたともされる。
元々は、黒人(有色人種)に社会的に高い地位を得させるのが目的で、職場での昇進でも優遇されていた。
今回の“違憲判決”でこうした社会政策が今後は行われなくなる。差別是正政策の歴史的な転換点になる。
日本に視点を移すと“理系女子”や“女性役員3割義務化”が「アファーマティブ・アクション」である。
これらも訴訟があれば日本でも“違憲判決”が出ると考えられる。全ての国民は平等でなければならない。
国民はみんな“人生を賭けて”仕事をしていると考える。また、家族が居ればその“将来も懸かっている”
もしも、一部の人々が優遇されて昇進などしたなら、逆に能力が有りながら昇進出来ない人々が出て来る。
米最高裁「入学選考での人種考慮は違憲」 学生の多様性減る可能性
Forbes JAPAN
米連邦最高裁は29日、ハーバード大学などが入学選考で人種を考慮しているのは憲法に違反しているとの判断を示した。大学の出願者で黒人やヒスパニック系を優遇する「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」は、数十年前から米国の多くの大学で採用されてきた。大学側は今後、選考方法の見直しを余儀なくされ、学生の多様性が大幅に減る懸念が出ている。
審理されたのは、私立のハーバード大学と公立のノースカロライナ大学の措置をめぐって保守系の団体「公平な入学選考を求める学生(SFFA)」が起こした訴訟2件。原告側は両大学が入学選考にあたって成績などのほかに人種も考慮しているのは、合衆国憲法修正第14条の「平等保護条項」に違反し、白人やアジア系の志願者を不利にしていると訴えた。
最高裁は9人いる判事のうち保守派6人の多数意見として、平等保護条項の例外は限られており、両大学のアファーマティブ・アクションはその例外に当てはまるようには運用されていないと認定。人種を否定的に扱ったりステレオタイプとして用いたりしてはならないとする同条項の命令に従っていないとも断じ、違憲との判決を下した。リベラル派の判事3人は反対した。
ハーバード大学とノースカロライナ大学は裁判で、自校の入学選考方法は判例にのっとったものであり、人種の考慮は学生の多様性確保に役立っていると主張。こうした選考方法は差別にあたらないと訴えていた。
多数意見を執筆した保守派のジョン・ロバーツ長官は、学生は「人種ではなく個人としての経験に基づいて扱われなくてはならない」と述べ、「多くの大学はあまりにも長い間、それと正反対のことをしてきた」と厳しく批判した。
一方、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事は反対意見で「数十年にわたる先例ときわめて重要な進歩を後退させるものだ」と批判している。
学生の多様性に大きな影響か
大学側は、アファーマティブ・アクションをやめれば学生の多様性に大きな影響が出ると警告している。ハーバード大学は裁判所に提出した文書で、入学選考で人種を考慮要素から除けば黒人の入学者の比率は現在の14%から6%に、ヒスパニック系の入学者の比率は14%から9%にそれぞれ減ると予想。また、アファーマティブ・アクションが違憲と判断されれば、人文科学を専攻する学生も14%減るとの見通しも示している。
ハーバード大学が法廷文書で引用している米大学入学カウンセリング協会(NACAC)の調査結果によると、米国で入学選考にあたって人種を考慮している大学は41.5%にのぼる。志願者の受け入れ率が40%以下の大学では60%に達する。
アリゾナやカリフォルニア、フロリダ、アイダホ、ミシガン、ネブラスカ、オクラホマ、ワシントンなど少なくとも9州はすでに、大学の入学選考で人種を考慮することを認めていない。ミシガン大学は法廷文書で、人種を考慮しない方式にした結果、2006年から2021年の間にアフリカ系の入学者が44%減ったことを明らかにしている。ミシガン州ではこの間、大学に通う年齢のアフリカ系住民の人口は増えていた。
アファーマティブ・アクションは、雇用主に対して「雇用のあらゆる面で平等な機会が確保されるよう積極的な措置を講じる」ことを指示した1965年の大統領令などに由来する。最高裁は1978年、大学が人種ごとに入学枠を設けるのは違憲とする一方、入学選考でのアファーマティブ・アクションは容認。2003年と2016年の判決でも支持していた。今回の訴訟2件は、下級審の判断を不服としたSFFAによる上告を受けて2022年1月に受理していた。
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